2019 年 48 巻 3 号 p. 161-169
[目的]開心術後に発生するSSIの予防を目的に,SSIバンドルを含めたリスク因子を検討した.[方法]研究デザインは後ろ向きコホート研究である.神戸市立医療センター中央市民病院で2008年1月~2010年12月(I期:感染対策実施時期)および新病院移転後の2014年1月~2016年12月(II期:感染対策強化時期)に開心術を施行した1,579例を対象にした.SSIのリスク因子は,単変量解析およびロジスティック回帰分析を用いて分析した.SSIの判定は米国疾病管理予防センターの医療関連感染調査に使用するSSI定義を用いた.[結果]SSI発生率は4.5%であり,I期とII期では,SSI発生率が6.6%から2.9%に有意に減少し(p<0.001),適切な予防抗菌薬の選択,術後72時間以内に予防抗菌薬の中止,術後1日目および2日目朝の血糖管理における対策の実施率が有意に増加していた(p<0.001).単変量解析の結果,手術手技,手術時期,手術時間,術後2日目朝血糖値,切開の1時間前以内に予防抗菌薬の投与開始,バンドル100%達成率において統計学的有意差を認めた.ロジスティック回帰分析の結果,複合手術(オッズ比2.5;95%信頼区間1.3~4.8)はSSIの発生する危険性が高くなり,切開の1時間前以内に予防抗菌薬の投与開始(オッズ比0.57;95%信頼区間0.33~0.97)と手術時期(II期,オッズ比0.41;95%信頼区間0.23~0.71)はSSIの発生する危険性が低くなった.[結語]SSI予防としては,特に予防抗菌薬は切開の1時間前以内に投与を開始することが重要であり,SSIバンドルの実施率を向上させること,複合手術を受ける患者はSSIの発生に注意を要することが肝要である.