2019 年 48 巻 3 号 p. 173-178
原因不明の肝硬変による繰り返す肝性脳症と診断されていた収縮性心膜炎の1例を経験した.症例は69歳男性.労作時の呼吸苦と下肢の浮腫で来院した.最近1年間で肝性脳症のため3回の入院歴があり,来院時高アンモニア血症,高ビリルビン血症,腎機能低下に加えCT検査で心膜の石灰化と両側胸水を認めた.経胸壁心エコー検査で拡張早期の心室中隔の異常運動と右室の拡張制限を認めた.心臓カテーテル検査で中心静脈圧(36 mmHg)と平均肺動脈圧(53 mmHg)の上昇および右室圧波形にdip-and-plateauを認めた.収縮性心膜炎の診断で手術を行った.右房全体から右室自由壁にかけての石灰化を伴った肥厚した心膜を切除した.術後は呼吸困難,浮腫は改善し社会復帰した.