2019 年 48 巻 3 号 p. 210-214
オープンステントグラフトで右鎖骨下動脈起始異常(aberrant right subclavian artery, ARSA)を処理し得た弓部置換術の2例を経験したので報告する.症例1は弓部大動脈瘤にARSAを合併していた.食道後方経路でのARSA再建は困難と考え,胸部正中切開での弓部大動脈置換術を施行し,オープンステントグラフトにてARSA起始部を閉鎖した.右腋窩動脈の血行再建として非解剖学的バイパスを追加した.症例2はStanford A型急性大動脈解離にARSAを合併していた.Primary entryはARSA起始部近傍にあり,オープンステントグラフトにてARSA起始部閉鎖とprimary entry閉鎖を行い,弓部大動脈置換術を施行した.右腋窩動脈の血行再建として非解剖学的バイパスを追加した.2例とも食道との交差部を避けて,ARSA近位部への血管内塞栓術も同時に行い,ARSA起始部への逆行性血流を制御した.術後経過は良好であった.本法はARSAを伴う症例に対しても,胸骨正中切開による弓部大動脈置換術でのアプローチで施行可能であり,有用な術式と考えられた.