2019 年 48 巻 5 号 p. 324-326
症例は34歳男性.有症候性の孤立性三尖弁閉鎖不全症に対して手術を施行した.心エコーにて腱索断裂による前尖逸脱および三尖弁輪拡大により重度の三尖弁逆流と著明な右室拡大を認めた.術所見では,弁輪まで至る前尖のcleftとその中隔尖側の前尖に付着する腱索が断裂していた.右室の前乳頭筋と前尖逸脱部にCV-5を縫着し,逸脱していない後尖側の前尖と高さを揃えた.前尖の大きなcleftは6-0 Proleneで閉鎖し,Tailor band 31mmで三尖弁綸縫縮を併施した.術中経食道心エコーで,前尖の逸脱は消失し,三尖弁逆流は軽度まで制御された.術後1年が経過し,三尖弁逆流は認めず,右心房,右室は著明に縮小した.先天性cleftおよび腱索断裂,弁輪拡大なる複雑病変による三尖弁閉鎖不全症に対しても,僧帽弁形成術の応用にて弁修復が可能であった.