2019 年 48 巻 5 号 p. 335-340
症例は88歳女性.腎動脈下腹部大動脈瘤の診断で局所麻酔下に経カテーテル的腹部大動脈ステントグラフト内挿術 (endovascular aortic aneurysm repair, EVAR)を施行した.術後突然心停止となり,蘇生後の心電図でV2-6のST上昇を認め,心エコーで心尖部の広範囲の無収縮および心基部の過収縮を認めた.冠動脈造影では有意な冠動脈病変は認めず,たこつぼ型心筋症と診断した.血行動態維持のためカテコラミンを要したが,数日後には心機能は正常化した.EVARは低侵襲な術式であるが,たこつぼ型心筋症はその周術期に起こり得る合併症である.たこつぼ型心筋症は重症化する危険性があり,急性期の速やかな診断と治療が重要である.