2020 年 49 巻 1 号 p. 30-34
症例は82歳女性.突然の右頸部痛を伴う呂律障害で前医へ救急搬送された.採血上逸脱酵素の上昇を認め,造影CTにて小脳梗塞を伴うA型急性大動脈解離の診断となり,当院へ搬送され,緊急で部分弓部大動脈置換術を施行した.術後経過は良好で,第1病日より経口摂取を開始していた.第6病日に38℃の発熱,その後腹部膨満感と下腹部の圧痛が出現した.造影CT検査にて虚血性小腸壊死・穿孔および腹腔内膿瘍の診断であり,緊急小腸部分切除術を施行した.その後の経過は順調であり,リハビリテーション目的に転院となった.腹部分枝に解離の及ばない急性大動脈解離における腹部臓器虚血は稀であり,若干の文献的考察をふまえ報告する.