2020 年 49 巻 2 号 p. 45-51
[背景] 心臓血管外科領域における置換用血管として中・大口径人工血管を用いた治療成績はほぼ満足できる状況にあるが,小口径血管では早期血栓形成等の問題から自己血管より優れた材料は市場に提供されていない.この研究では,われわれが作製した高静水圧法による脱細胞化血管が有する組織再構築機能等の解析を目的とした.[方法] 移植用脱細胞化血管としてウシ足部動脈を使用した.高静水圧法による脱細胞化処理にて脱細胞化移植血管を作製した.ドナーとして用いたクラウンミニブタ4頭の頸動脈一側に,作製したウシ足部動脈由来脱細胞化血管を移植した.術中ヘパリンを用いたが,術後には抗凝固薬および抗血小板剤の投与は行わなかった.移植1カ月後に血管を摘出し開存性および組織染色学的に評価した.[結果] 4頭全例で移植血管の開存を認めたが,うち1頭の移植血管内には一部血栓を認めた.他3頭においての剖検時の移植血管内の血流は移植時と比べて変わりない結果であった.組織学的評価においても,コラーゲンやエラスチンに問題はみられず,血管壁構造は良好に維持されていた.[結語] 本研究により,抗血小板療法を行わなくても内腔の基底膜を維持している生体由来脱細胞化血管の高機能性が証明された.更なる改良は必要としながらも,既存材料よりも高機能性を有する医療デバイス開発への一助となる可能性が示唆された.