2020 年 49 巻 2 号 p. 67-71
脾臓摘出後症例は肺炎球菌やインフルエンザ菌などの莢膜保有菌によって敗血症などの重症感染症に罹患しやすく,Overwhelming Postsplenectomy Infection(OPSI)としてしられている.脾臓摘出後は肺炎球菌莢膜多糖体特異抗体が産生されないことや,循環血液フィルターの欠如のために肺炎球菌など莢膜保有菌感染が重症化しやすく,急激な進行から救命が困難な場合も多い.40歳男性が脾摘後20年目にOPSIから,肺炎球菌による感染性心内膜炎を生じ,救急搬送された.重症心不全であり,心エコーで大動脈弁に疣贅が付着,大動脈弁が穿孔し,高度逆流を認めた.多発脳塞栓症を合併していたが,同日緊急手術を施行し救命しえた.脾摘後症例では,特に莢膜保有菌で敗血症が急激に進行して予後不良になる可能性を念頭に,早期診断と迅速な治療が望まれる.