日本心臓血管外科学会雑誌
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本邦における心臓血管外科手術の現状:2017年,2018年の日本心臓血管外科手術データベースからの報告 4. 胸部大動脈手術
志水 秀行平原 憲道本村 昇宮田 裕章髙本 眞一
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2020 年 49 巻 4 号 p. 169-179

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抄録

[目的]本邦における大動脈疾患に対する治療の現状を分析した.[方法]日本心臓血管外科手術データベース(JCVSD)を用い,2017年,2018年に本邦で施行された胸部・胸腹部大動脈手術の症例数,手術死亡率,合併症(脳梗塞,腎不全,肺炎,対麻痺)発症率を,部位(基部・上行,弓部,下行,胸腹部),術式,年齢階層に分けて分析した.[結果]症例数は約40,000例で,解離と非解離がほぼ同数であった.手術年齢は70歳代が最多で,高齢になると基部・上行における基部置換(特に自己弁温存),弓部以遠における開胸手術(人工血管置換,オープンステントグラフト)の割合が減少した.全体の死亡率は5.3%であった.術式別の成績は,基部・上行では自己弁温存手術の死亡率,合併症発症率が最も低く,弓部以遠では非開胸手術(TEVAR,デブランチ)の死亡率,脳梗塞,腎不全,肺炎の合併率が開胸手術より低かった.弓部の対麻痺は他の合併症と異なり,人工血管置換における合併率が最も低かった.年齢に関しては,基部・上行,弓部,下行ではすべての術式で80歳以上の手術死亡率が80歳未満より有意に高かった.[結論]本邦における胸部・胸腹部大動脈手術は70歳代が最多で高齢であったが,全体の死亡率は5.3%で良好であった.80歳以上では死亡率,合併症発生率が高かった.今後さらなる手術成績の改善が求められる.

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