日本心臓血管外科学会雑誌
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[先天性疾患]
ワーファリン皮膚潰瘍に対してヘパリン皮下注導入を行った機械弁置換術後 Ebstein 病の1例
宇野 吉雅森田 紀代造篠原 玄國原 孝
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2020 年 49 巻 4 号 p. 188-191

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抄録

症例は57歳,女性.原疾患であるEbstein病に対して12歳時に三尖弁形成術,その後TR, MR再燃に対して32歳時に人工弁置換術(T弁位生体弁,M弁位機械弁)が施行されワーファリン内服管理となっていた.以後40歳ごろより出現していた右下腿皮膚潰瘍が,46歳時に行われたT弁位生体弁硬化に対する人工弁再置換術(機械弁)術後より増悪,難治性となり,これまでに3回植皮手術を受けている.原因については,種々の内科的検査を重ねたが確定に至らず,また植皮手術に際し周術期の抗凝固療法をワーファリンよりヘパリン静注に移行すると皮膚潰瘍所見の改善傾向が認められることより,最終的にはワーファリンの副作用によるものと考えられた.そこでワーファリン回避を目的に,今回4度目の植皮手術後よりヘパリンの皮下注を導入し抗凝固療法を継続した.容量および凝固能の指標としては,1回10,000単位を12時間おきに使用する形で適宜APTTを測定し皮下注後の効果の推移を検討するとともに,併せてD Dimer値により潜在的な血栓弁の評価を行った.退院後も同管理を継続しているが,現時点ではほぼ安定したAPTT測定値が得られ,また心臓エコー検査等において血栓塞栓症を疑わせる所見は認められていない.さらに皮膚潰瘍の再燃なく,植皮創部の状態も良好な経過が得られている.今後も外来における管理継続を予定しているが,長期にわたるヘパリン皮下注による抗凝固療法に関しては症例経験あるいは文献報告がほとんどされていないため,慎重な経過観察が重要と考えている.

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