日本心臓血管外科学会雑誌
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[大血管]
脳梗塞を契機に発見された上行大動脈内血栓症の1例
笠 兼太朗篠崎 滋渡辺 卓
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2020 年 49 巻 5 号 p. 300-304

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抄録

症例は57歳男性.二度の脳梗塞の既往があったが,後遺症はなく,服薬や通院を自己中断していた.農作業終了後の午後5時過ぎに,突然の左片麻痺が出現し,救急搬送された.頭部CTで右大脳基底核に新規梗塞巣を認めた,全身の造影CTで,上行大動脈内の陰影欠損と右内頸動脈閉塞,左椎骨動脈の閉塞を認めた.脳梗塞の原因は上行大動脈内血栓による塞栓症と診断した.急性期の頸動脈塞栓症に対する脳神経外科的な手術適応はなく,また血栓量が多いことから急性期血栓溶解療法の適応もないため,ヘパリンの持続点滴を開始して,待機手術の方針とした.入院後に神経症状の増悪はなく,発症第24病日に上行置換術を施行した.術後に大きな合併症もなく経過し,術後第1病日に抜管し,術後第31病日にリハビリ目的に転院した.術後6カ月を経過し,麻痺症状はほぼ消失し,その後のCTでも動脈内血栓の再発は認めない.

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