2020 年 49 巻 5 号 p. 305-309
大動脈解離や大動脈瘤に播種性血管内凝固症候群(DIC)を伴う場合がある.DICでは凝固系と線溶系の破綻が生じ,そのバランスにより線溶抑制型,線溶均衡型,線溶亢進型に病型分類される.トラネキサム酸は抗プラスミン作用を有し,プラスミンがフィブリンを分解する過程を阻害することで線溶系を抑制する薬剤である.DICに対するトラネキサム酸投与は原則禁忌とされてきたが,非感染性慢性DICに対する使用の有効性の報告が散見される.大動脈解離,大動脈瘤に合併したDICに対してトラネキサム酸を投与し,良好な経過を得た2症例を経験したため,文献的考察を加え報告する.