2020 年 49 巻 6 号 p. 335-338
先天性僧帽弁閉鎖不全症は比較的稀な疾患であり,特に成人期での症例報告は非常に少ない.症例は77歳男性.僧帽弁閉鎖不全症と心房細動に対し19年間の薬物治療がなされていたが,うっ血性心不全が増悪し紹介となった.術前の経胸壁および経食道心エコーにおいて,重度の僧帽弁逆流を認めた.後尖の腱索が非常に短く,それらは弁直下の心筋に直接付着しており可動性が低下していることが逆流の原因であった.このような特異なエコー所見から先天性僧房弁閉鎖不全症(Carpentier III型)と診断し弁形成術を行った.手術は低形成であった後尖P2からP3の腱索をすべて離断し,5対の人工腱索を用いて形成した.術後の心エコー検査においては,後尖の可動性は回復しており僧帽弁の逆流を認めなかった.