[背景]真菌性感染性大動脈瘤は感染性瘤の中でも稀である.深在性真菌症として外科的治療,抗真菌治療など行われるが,適切な治療戦略,管理についてはいまだ定説はない.[症例]69歳,男性.Candida albicans敗血症の既往あり.退院2カ月後,背部痛と便秘を自覚.腎動脈下腹部大動脈に突出する嚢状瘤を指摘され当科に紹介された.緊急でin-situ人工血管置換術を施行した.術野検体C. albicansの薬剤感受性,眼内炎合併をもとに抗真菌薬の選択を行い安定して経過,退院した.術後1年のフォローアップCTで吻合部仮性瘤を認め,腎動脈上腹部大動脈への感染波及も懸念したため開胸・後腹膜経路併用で再手術施行し,初回の人工血管除去および腎動脈再建,in situ再建とした.術野培養は陰性で感染については制御しえたと考えた.経口抗真菌薬継続,術後8カ月経過し再燃の兆候はない.[結論]真菌性感染性腹部大動脈瘤では血管外科治療に加えて感受性検索,播種病変検索など包括的対応が不可欠である.