日本心臓血管外科学会雑誌
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[成人心臓]
大動脈弁置換術後急性期に無冠動脈洞から左心房への短絡を発症した1例
落合 智徳内田 徹郎黒田 吉則山下 淳大塲 栄一中井 信吾小林 龍宏貞弘 光章
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2021 年 50 巻 1 号 p. 31-33

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抄録

症例は60歳,男性.大動脈弁閉鎖不全症,三尖弁閉鎖不全症,左前下行枝狭窄に対し,大動脈弁置換術,三尖弁輪形成術および冠動脈バイパス術を施行した.術後に施行した心臓超音波検査で無冠動脈洞-左心房短絡を認めた.更なる短絡量増加と感染性心内膜炎発症の可能性を危惧し,術後21日目に再手術による短絡閉鎖術を施行した.手術所見では,無冠動脈洞と左心房両者の内膜に小さい損傷部を認めた.無冠動脈洞と左心房の損傷部をそれぞれ閉鎖したうえで,無冠動脈洞壁と左心房壁を挟み込むマットレス縫合で短絡閉鎖部を補強した.再手術後の術後経過は良好であった.大動脈弁置換術後の無冠動脈洞-左心房短絡は非常に稀な合併症だが,再手術を必要とする可能性がある重篤な合併症として認識し,よりいっそう確実な手術手技を心がける必要がある.

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