2021 年 50 巻 3 号 p. 207-209
症例は68歳,男性.右鼠径部の痛みを自覚し,2カ月前に近医で深部静脈血栓症が疑われた.血栓自体の治療可否の判断のため当科紹介となった.CTおよび下肢超音波検査から総大腿外膜嚢腫が疑われ手術施行した.全身麻酔下に嚢腫を静脈壁全層で切除し大伏在静脈パッチで形成した.術後抗凝固療法を1年間継続した.外来通院中であるが嚢腫の再発や静脈血栓症をきたしていない.大腿静脈外膜嚢腫は稀な疾患であり,時として深部静脈血栓症と誤診されることもある.治療後の再発も稀ではないため慎重な経過観察が必要である.