[背景]2016年4月から新たなステントレス生体弁としてSOLO SMART (SOLO) が日本に導入された.ステント付き生体弁に比べ大きな有効弁口面積を得ることができるため,良好な血行動態が期待できる.一方でSOLOによる大動脈弁置換術 (AVR) 後に血小板減少が発生することが報告されている.[方法]AVR施行患者をSOLO群とステント付き生体弁 (Stented) 群に分け,周術期手術成績および血小板減少の頻度,血小板値の推移を比較した.当院でSOLOの導入を開始した2017年4月から2020年3月において大動脈弁狭窄症 (AS) に対して生体弁で待機的にAVRを行った67症例を対象とした.術後の最低血小板値が5.0×104/μl以下を重度血小板低下症例と定義した.[結果]術後の大動脈弁口面積と最大圧較差は,Stented群と比較しSOLO群において有意な改善を認めた.術後の最低血小板値はSOLO群で有意に低値だった.重度血小板低下症例はSOLO群15例 (75%) ,Stented群3例 (7%) に認めた.血小板低下を来す因子として,SOLOの使用・手術時年齢・体表面積において有意差を認めた (p<0.05).全症例で血小板値は術後2~4日目に最低値を迎えるが,その後は自然に回復し,術後1カ月の時点で正常値まで改善した.しかし,Stented群では術後1週間の時点で術前値まで回復したが,SOLO群では3カ月経過しても術前値までは回復しておらず,血小板の回復が遅延することが示唆された.[結語]SAVRにおいてSOLO弁を選択することで,より良好な血行動態を期待できる.一方で,SOLO弁の使用は重度血小板低下を来す独立した危険因子であった.臨床的に重篤な出血性合併症は認めなかったが,SOLO弁により術後の血小板回復が遅延する可能性がある.
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