日本心臓血管外科学会雑誌
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[成人心臓]
重度の脳血管障害を有する HIV 感染者に対して心拍動下冠動脈バイパス術を施行した1例
川越 勝也中村 栄作立岡 修治久 容輔上野 隆幸中村 都英
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キーワード: HIV, OPCAB, cART
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2021 年 50 巻 6 号 p. 378-382

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抄録

症例は50歳,男性.13年前よりヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染に対して抗HIV治療を開始した.9カ月前に胸痛を認め急性心筋梗塞の診断で,#6に経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行されるも服薬を自己中断していた.7カ月前に再度胸痛が発症し,緊急の冠動脈造影検査で前回のステント内に血栓を認め,PCIが施行された.残存病変に対するPCI時にアナフィラキシーショックを伴う造影剤アレルギーを認め治療をいったん中止した.ステロイドの前投与および造影剤の変更も行いPCIを試みたがアナフィラキシーショックを認めたためPCIを断念し,冠動脈病変も3枝病変に進行したことから手術適応とされた.術前の頭部MRI検査ではHIV感染症関連血管障害に伴う重度の脳血管障害を認めたため,心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)を施行した.術後脳血管障害・細菌感染等の合併なく術後10日目に転院となった.HIV感染症関連血管障害に伴う重度の脳血管障害を有する患者に対してOPCABを施行し,術後脳血管障害・細菌感染等の合併・後天性免疫不全症候群の発症等なく良好な成績を得られた症例を経験したので報告する.

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