日本心臓血管外科学会雑誌
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[末梢血管]
失語を伴う脳梗塞を発症した左鎖骨下動脈盗血症候群に対し腋窩-腋窩動脈バイパス術を施行した1例
野村 颯早津 幸弘羽場 文哉山谷 一広畑 正樹
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2022 年 51 巻 1 号 p. 57-60

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抄録

症例は79歳女性.弓部大動脈瘤に対し全弓部人工血管置換術を施行し,合併症を認めず術後25日目に退院となった.術後CTでは,頸部分枝再建部を含め異常を認めなかった.しかし,術後10カ月目に左肩痛を主訴に当科外来を受診された.CTで,左鎖骨下動脈再建部からの完全閉塞を認め,頸動脈エコーでは鎖骨下動脈盗血現象を認めた.神経学的症状を認めなかったため経過観察となったが,術後11カ月目に一過性の意識消失と失語症を発症し,当院へ搬送となった.前医のMRIでは中大脳動脈と後大脳動脈の分水嶺域にあたる側頭葉皮質後半部を中心とした脳梗塞を認め,当院搬送後の拡散強調画像では同部位の高信号域拡大を認めた.失語を伴う脳梗塞を発症した鎖骨下動脈盗血症候群と診断し,さらなる脳虚血の進行抑制のため腋窩動脈-腋窩動脈バイパス術を施行した.術後には失語の改善を認め,MRIにおいても新たな梗塞巣の出現を認めなかった.失語を含め明らかな後遺症を認めず,術後9日目に退院となり,1年半が経過した現在も再発を認めていない.脳梗塞を発症した鎖骨下動脈盗血症候群の症例に対し,非解剖学的バイパスでの血行再建を行い良好な結果が得られたため,文献的考察を含め報告する.

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