日本心臓血管外科学会雑誌
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[末梢血管]
肺血栓塞栓症を発症した膝窩静脈の静脈性血管瘤の1治験例
吉本 公洋若狭 哲
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2022 年 51 巻 1 号 p. 53-56

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抄録

静脈性血管瘤(Venous Aneurysm:VA)は限局性の静脈拡張性病変と定義される比較的稀な疾患であるが,深部静脈のVAでは瘤での血栓形成が肺血栓塞栓症(PTE)の原因となるため外科治療の適応となる.PTEの発症を契機に発見された膝窩静脈のVAが塞栓症の原因と考えられ手術を施行したので報告する.症例は79歳の女性.突然の呼吸困難の出現で当科を受診,心臓超音波検査で右心負荷と肺高血圧の所見があり,造影CTにて肺動脈塞栓と右膝窩静脈のVAを認めた.PTEの加療ののち内部に血栓を有するVAの外科治療を施行した.手術は腹臥位の後方アプローチで瘤切除と静脈形成術を行った.術後の造影CTでは静脈の瘤化や静脈内血栓像なく下腿浮腫などの静脈還流障害を疑う所見も認めていない.突然発症の呼吸苦ではPTEを念頭にすみやかに確定診断をなす必要があり,有症状の膝窩静脈のVAに対しては外科治療が推奨されると考える.

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