2022 年 51 巻 5 号 p. 285-290
72歳女性.慢性心房細動に対し3回の心房カテーテルアブレーション手術歴あり.これまでの慢性心房細動により重度心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症となり息切れと下腿浮腫を呈し,また15×12×11 cmの巨大左房が食道を圧迫し嚥下障害を認めたため,外科治療の適応とした.36 mm人工弁輪を用いた僧帽弁輪縫縮術,Kay法による三尖弁輪縫縮術,左心耳切除とともに,Spiral resection法を用いて左房後壁,側壁,天井壁を幅4 cmにわたり広範囲切除し,左房を縮小した.術後,僧帽弁逆流と三尖弁逆流はtrivialに減少し,左房容量の減少により左室拡張能が改善し,左室拡張末期容量と一回心拍出量の増大を認めた.嚥下障害は消失し,心胸郭比は80%から56%まで低下,気管支角度は110度から90度となり,NYHAは術前のIII度からI度に改善した.弁形成術に加え巨大左房に対する広範囲左房切除を行い良好な結果を得たため報告する.