2023 年 52 巻 1 号 p. 9-13
症例は72歳女性.2014年より全身性エリテマトーデス,抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid antibody syndrome; APS)加療のために通院中であった.2020年にリウマチ性重症僧帽弁狭窄症(mitral valve stenosis; MS)により労作時息切れが出現し,あわせて発作性心房細動と冠動脈狭窄を指摘され,手術の方針となった.手術は僧帽弁置換術+三尖弁輪形成術+冠動脈バイパス+肺静脈隔離術+左心耳閉鎖術を行った.APSによる活性化凝固時間(active clotting time; ACT)延長に対する対策として,術中の人工心肺における抗凝固管理は,HMS PLUSを用いて血中ヘパリン濃度指標下に抗凝固管理を行った.周術期に出血性合併症や血栓塞栓症は認めず,術後23日目に自宅退院した.今回,APS患者の人工心肺を用いた開心術において,目標ヘパリン濃度を3.5 U/mlに設定しHMS PLUSによるヘパリン濃度測定下に抗凝固管理を行い,合併症なく経過したため報告する.