2023 年 52 巻 1 号 p. 14-17
左室右房交通症は先天性にも後天性にも生じうる稀な疾患である.近年心臓手術件数の増加や診断技術の向上に伴い,後天性の左室右房交通症の報告が増加傾向にある.われわれは大動脈弁位感染性心内膜炎による後天性左室右房交通症の1例を経験したので報告する.症例は52歳男性.増悪する労作時呼吸困難感,下腿浮腫を主訴に前医を受診した.採血検査にて炎症所見が高値であり,経胸壁心エコーにて大動脈弁に疣腫を認めたため,当院循環器内科に入院となった.感染性心内膜炎の診断に対して抗菌薬および心不全加療を開始され,術前に施行した心臓CTにて左室右房交通症の診断を得た.手術加療の方針となり,欠損孔を右房側と左室側より自己心膜パッチで2重に閉鎖し,機械弁を用いて大動脈弁置換術を行った.術後経過は良好であった.