2023 年 52 巻 2 号 p. 114-117
症例は77歳女性.腹部大動脈瘤の診断で腹部大動脈ステントグラフト内挿術(以下EVAR)を施行.術後7カ月でtype 2エンドリークによる瘤径拡大のため腰動脈コイル塞栓を追加.以後大きな問題なく経過していた.術後5年5カ月で発熱主訴に前医受診,血液検査でCRP 10.11 mg/dlと高値であり,CT検査で腹部大動脈瘤の拡大と大動脈瘤壁外に膿瘍を疑う腫瘤を認めた.抗菌薬治療が開始されたが,CT再検で腫瘤が増大傾向にあり,またPET-CTで同部位に集積を認めたことから外科的治療介入が必要と判断され,当科紹介となった.感染性腹部大動脈瘤と診断し,手術を施行した.腹部正中切開で開腹,ステントグラフトを抜去,大動脈瘤壁を可及的に摘除した後,リファンピシン浸漬人工血管を使用し,人工血管置換を実施した.術中に採取した瘤内容物,瘤壁,腫瘤内容物の培養結果はいずれも陰性であった.瘤壁の病理検査結果はXanthogranulomatous inflammationの診断であった.術後速やかに炎症反応が改善,術後15日目に軽快退院となった.EVAR後の大動脈瘤壁に黄色肉芽腫性炎症を来した症例を経験したので報告する.