日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告[成人心臓]
サラセミア患者の大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症と上行大動脈瘤の手術経験
坂井 亜依池田 真浩
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2023 年 52 巻 3 号 p. 154-158

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抄録

サラセミアは溶血性貧血を呈する遺伝性疾患であり,人工心肺の使用により溶血が増悪するため注意が必要であるとされているが,サラセミア患者の開心術の報告は少ない.サラセミア患者の大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症と上行大動脈瘤の外科治療を経験したため報告する.症例は69歳女性で,二尖弁による重症大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症と最大短径49mmの上行大動脈瘤を指摘され,当院紹介となった.小球性貧血の精査でβサラセミアと診断された.手術は中等度低体温循環停止,逆行性脳潅流併用下に,上行大動脈置換術に続いて生体弁での大動脈弁置換術を行った.人工心肺には非拍動流の遠心ポンプを使用し,吸引回路とベント回路は低回転数で使用した.溶質貯留に備えDilutional ultrafiltration(DUF)を施行し,溶血による人工肺閉塞に備えて人工肺交換用回路を接続した.重篤な溶血を呈することなく,経過良好で術後20日目に退院した.術前にサラセミアを認識し,十分に治療戦略を立てることが重要であると考えられた.

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