2023 年 52 巻 3 号 p. 149-153
[目的]胸部大動脈人工血管置換術後の無菌性膿瘍の報告は稀である.胸部大動脈人工血管置換術後中期から遠隔期に感染徴候がないものの人工血管周囲に液体が貯留し,さらに体表に膨隆し外科的治療を要する症例に対する当院での治療の妥当性について検討した.[対象]2013年4月~2020年3月に基部から弓部大動脈人工血管置換術を施行した341例のうち,術後中期から遠隔期に人工血管周囲に液体が貯留し,前頸部等の体表に膨隆した4例を対象とした.これらは術後平均10.3(3~27)カ月後に体表に膨隆し発症し,全例に大網充填術を施行した.[結果]貯留していた液体は漿液性ではなく膿性であり,複数回の細菌培養検査でも菌は検出せず,膿性でありながら菌を検出しない無菌性膿瘍と考えられた.大網充填術後平均5.4(1~8.5)年経過しているが再発は認めない.[結論]胸部大動脈人工血管置換術後中期から遠隔期に発症した無菌性縦隔炎は大網充填術により再発を認めず,有効な治療法であると考えられる.