日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
症例報告 [成人心臓]
胸腹部人工血管置換術後のelephant trunk狭窄によるアクセス困難に対してTEVARを追加し完遂できたTF-TAVIの1例
林 奈宜柚木 純二馬場 康平大崎 隼山元 博文陣内 宏紀諸隈 宏之蒲原 啓司
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 52 巻 4 号 p. 249-252

詳細
抄録

経カテーテル的大動脈弁置換術 (TAVI) では経大腿動脈 (TF) アプローチが最も多く,侵襲の少ない方法であるが,時にアクセスが悪く,施行困難な症例も経験する.また,過去の人工血管置換術は脚の径,屈曲,吻合部やelephant trunkなどデバイスの通過が困難なこともある.今回,胸腹部置換術後のアクセス困難に対してTEVARを追加しTF-TAVIを完遂した症例を経験した.症例は80歳女性.13年前に胸腹部人工血管置換術を施行された.術後のフォロー中に大動脈弁狭窄症を認め,徐々に増悪あり手術適応となった.心エコー検査ではPeak Velocity 4.9 m/s, Mean PG 57 mmHg, AVA 0.53 cm2と重症大動脈弁狭窄症の所見であった.CTでは大動脈弁輪面積が379 mm2で,LADの狭窄を有することから,Sapien 3 23 mm弁でのTAVIを予定した.人工血管の中枢側吻合部にはelephant trunkが足側に折りたたまれて挿入されており,狭窄が疑われたため,術中IVUSでの評価も行うこととした.手術は局所麻酔+鎮静下にTFアプローチで行った.ワイヤーが足側から通過しなかったため,左橈骨動脈より大腿動脈にpull throughを作成した.Elephant trunkはIVUSで狭小化を認めたため,デバイスの通過困難を危惧し,elephant trunkの固定と吻合部の拡張のためTEVARを追加した.弁の通過は良好で,問題なく手術は終了した.Elephant trunk等の人工血管置換術後アクセス困難症例に対して,TEVAR追加が,低侵襲な治療であるTF-TAVIを完遂するために有用であった.

著者関連情報
© 2023 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top