経カテーテル的大動脈弁置換術 (TAVI) では経大腿動脈 (TF) アプローチが最も多く,侵襲の少ない方法であるが,時にアクセスが悪く,施行困難な症例も経験する.また,過去の人工血管置換術は脚の径,屈曲,吻合部やelephant trunkなどデバイスの通過が困難なこともある.今回,胸腹部置換術後のアクセス困難に対してTEVARを追加しTF-TAVIを完遂した症例を経験した.症例は80歳女性.13年前に胸腹部人工血管置換術を施行された.術後のフォロー中に大動脈弁狭窄症を認め,徐々に増悪あり手術適応となった.心エコー検査ではPeak Velocity 4.9 m/s, Mean PG 57 mmHg, AVA 0.53 cm2と重症大動脈弁狭窄症の所見であった.CTでは大動脈弁輪面積が379 mm2で,LADの狭窄を有することから,Sapien 3 23 mm弁でのTAVIを予定した.人工血管の中枢側吻合部にはelephant trunkが足側に折りたたまれて挿入されており,狭窄が疑われたため,術中IVUSでの評価も行うこととした.手術は局所麻酔+鎮静下にTFアプローチで行った.ワイヤーが足側から通過しなかったため,左橈骨動脈より大腿動脈にpull throughを作成した.Elephant trunkはIVUSで狭小化を認めたため,デバイスの通過困難を危惧し,elephant trunkの固定と吻合部の拡張のためTEVARを追加した.弁の通過は良好で,問題なく手術は終了した.Elephant trunk等の人工血管置換術後アクセス困難症例に対して,TEVAR追加が,低侵襲な治療であるTF-TAVIを完遂するために有用であった.
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