日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
症例報告 [成人心臓]
冠静脈洞開口部狭窄を合併した僧帽弁閉鎖不全症,大動脈弁閉鎖不全症に対する1手術例
榊原 聡山内 孝勝谷 礼子
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 52 巻 6 号 p. 417-421

詳細
抄録

症例は58歳男性.2カ月ほど前より動悸,労作時呼吸困難が出現し近医受診.精査の結果心不全を疑われたため,精査加療目的に当院紹介受診され,僧帽弁閉鎖不全症,大動脈弁閉鎖不全症の診断となった.心電図非同期の術前胸部CTにて冠静脈洞開口部が狭小であり,同期CTにて精査すると冠静脈は通常の右房開口部で4.1 mm,また右房に2カ所(2.0 mm,2.3 mm)と右室に1カ所(1.5 mm)開口している形であり,通常の逆行性心筋保護は困難であると判断.本症例に対し,順行性心筋保護のみで僧帽弁形成術,大動脈弁置換術を施行し,大動脈遮断解除後体外循環離脱も容易であった.僧帽弁形成術の成否の術中判断については,大動脈基部を用手圧迫することで水負荷試験を行った.安全な開心術中の心筋保護投与のために,先天性心奇形を合併しない成人心臓疾患ではきわめて稀な形態異常であるが,狭小化冠静脈洞開口部は留意しておく必要があると思われた.

著者関連情報
© 2023 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top