日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告[大血管]
腎動脈上遮断および異所性腎動脈再建を要した馬蹄腎合併解離性腹部大動脈瘤の1例
河野 敦則大村 篤史長命 俊也浜口 真里阪口 和憲中井 秀和山中 勝弘井上 武岡田 健次
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2024 年 53 巻 1 号 p. 33-37

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抄録

腎動脈上遮断および異所性腎動脈再建を要した馬蹄腎を伴った解離性腹部大動脈瘤の1例を経験したので報告する.症例は60歳男性.従来の左右の腎動脈とは別に,異所性腎動脈を2本認め, 正中側と右側の馬蹄腎を灌流していた.経腹膜到達法で手術を行い,馬蹄腎峡部を離断せずに腹部大動脈瘤の剥離が可能であった.腎動脈下レベルで腹部大動脈を遮断し大動脈瘤を切開した.異所性腎動脈を同定した後におのおのに灌流カニューレを挿入し,4℃に冷却したリンゲル液を主成分とする腎保護液を注入した.その後,腎動脈上に大動脈遮断を移し,腎動脈分岐直下のレベルで中枢側吻合を行った.腎動脈上遮断時間は23分であった.その後,正中,右側の順に異所性腎動脈を再建し,おのおのの虚血時間は73分,103分であった.血清クレアチニン値は術前1.17 mg/dlから術後2日目に3.63 mg/dlまで上昇したが,以後は徐々に低下し,退院前の血清クレアチニン値は1.25 mg/dlであった.造影CTで再建した異所性腎動脈はすべて開存していた.術後経過は大きな問題なく,術後21日目に独歩退院した.術後1年経過し,腎機能悪化なく大きな問題を認めていない.

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