日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告[成人心臓]
AVR後,生物学的製剤投与中に弁輪部膿瘍を生じた高安動脈炎の1例
川口 信司中井 真尚小澤 貴大内山 大輔宮野 雄太寺井 恭彦山田 宗明野村 亮太三岡 博
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2024 年 53 巻 2 号 p. 66-69

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抄録

症例は32歳女性.5年前に高安動脈炎と診断され,1年前に大動脈弁閉鎖不全症に対して大動脈弁置換術を施行した.高安動脈炎に対してPrednisoloneとAzathioprine内服を継続していたが4カ月前からTocilizumab皮下注に変更となった.1カ月前から労作時呼吸苦を認め,2日前から胸部不快感が出現し当院を受診した.血液検査ではCRP 0.02 mg/dl,心エコーとCTで弁周囲逆流と大動脈基部仮性瘤を認めたため,高安動脈炎による大動脈基部仮性瘤を疑い緊急手術を施行した.大動脈基部に全周性に仮性瘤を認めたが,人工弁の破壊は認めなかった.前回手術時の縫合糸は人工弁のsawing cuffに付着しており,人工弁は弁輪に固定されておらず容易に摘出できた.生体弁と人工血管でcomposite graftを作製しBentall手術を施行した.病理組織診断では亜急性の感染性心内膜炎の診断で,感染による大動脈基部仮性瘤と診断した.術後経過は良好で第19病日に独歩自宅退院となった.術後Tocilizumab皮下注は中止しPrednisolone内服のみを継続しており,術後3年経過したが再発は認めず経過している.AVR後,生物学的製剤投与中に弁輪部膿瘍を生じた高安動脈炎に対して外科的治療を施行した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

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