2024 年 53 巻 3 号 p. 123-126
症例は75歳女性.胸背部痛にて救急要請し,搬送中に心室細動となり除細動を施行され当院へ搬送された.病着時ショックバイタルであった.心電図にてaVRでST上昇,II,III,aVF, V4-V6でST低下があり,経胸壁心臓超音波検査では前壁から側壁,下壁にかけて壁運動低下を認めた.緊急冠動脈造影(CAG)および血管内超音波(IVUS)所見より大動脈解離の左冠動脈主幹部(LMT)への進展による灌流障害と診断した.緊急でLMTへ経皮的冠動脈形成術(PCI)を行い再灌流を得た.厳格な血圧管理を行い循環の立ち上がりを確認し,発症2日後に,上行大動脈人工血管置換術を行った.術後は長期人工呼吸器管理を要したが,低心拍出症候群(LOS)に陥ることなく経過した.本症例ではLMT解離に対する緊急PCIにより心筋虚血を最小限にでき,循環の立ち上がりを待って手術を行えたことにより術後LOSの回避,救命が可能であった.