2024 年 53 巻 3 号 p. 95-99
症例は75歳男性.陳旧性心筋梗塞に対し経皮的冠動脈形成術,16年前に冠動脈バイパス術(左内胸動脈-左前下行枝, 右内胸動脈-橈骨動脈-4PD-14PL)を施行され,以降外来フォローされていた.心不全症状,心エコーで僧帽弁閉鎖不全症の増悪を認め,手術目的に当科入院となった.術前冠動脈CTでnative coronary arteryはorificeからgraft吻合部近位まで両側とも完全閉塞,冠血流は上記graftのみに完全依存していた.そのため手術時心筋保護は順行性冠灌流法が不可能であった.術中両側ITAのgraft剥離,遮断が可能だったため,逆行性持続冠灌流法を用いて手術を施行した.術中心停止は131分,心停止維持ならびに術野もほぼ無血視野で良好であり,術後max CK-MBは50.5 IU/Lと心筋保護も十分であると思われた.