2024 年 53 巻 4 号 p. 183-187
メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(Methotrexate-associated lymphoproliferative disorder: MTXLPD)に惹起された弁膜症という稀な症例を経験した.症例は60歳女性.関節リウマチに対しMTXを内服していた.四肢に皮膚潰瘍を発症し,皮膚生検にてLPDの診断となった.皮膚生検の翌日に腸管穿孔を発症し,小腸部分切除術が施行された.周術期にMTXを休薬した.うっ血性心不全を合併し,重症僧帽弁閉鎖不全症,中等度-重症大動脈弁閉鎖不全症の診断となった.僧帽弁形成術および大動脈弁置換術を行った.僧帽弁に穿孔を認め,穿孔周囲にカリフラワー状の隆起を認めた.大動脈弁尖端もカリフラワー状に変性していた.病理所見にて弁組織にBリンパ球の浸潤とEpstein-Barr virusの感染を認めた.前駆する皮膚潰瘍の病理所見と同様でLPDと診断した.皮膚潰瘍はMTX休薬以降に軽快し,病理所見と経過からMTXLPDと診断した.術後19日目に独歩退院した.