日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告[大血管]
弓部置換後末梢吻合部感染性仮性瘤に対するTEVAR後の感染ステントグラフトを摘出した1例
森 久弥髙木 寿人波里 陽介内藤 敬嗣
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2024 年 53 巻 5 号 p. 283-289

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抄録

弓部大動脈置換術(total arch replacement; TAR)後の感染性と考えられる末梢側吻合部(distal anastomosis; DA)仮性瘤に対する準緊急大動脈ステントグラフト内挿術(thoracic endovascular aortic repair; TEVAR)後に,感染ステントグラフト(endograft; EG)を摘出した症例を経験したので報告する.症例は70歳男性で,10年前に遠位弓部大動脈嚢状瘤に対してTARを,5年前に腹部大動脈瘤に対して開腹Y字型人工血管置換術をそれぞれ受けた.3年前に繰り返す40℃の発熱で入院し,造影CT検査でTARのDAに疣贅と考えられる腫瘤と感染性と考えられるDA仮性瘤を認め,入院翌日に準緊急TEVARを行った.血液培養でStaphylococcus capitisが検出され抗菌薬治療を行い,血液培養が陰性となって退院した.今回は顔面・下腿浮腫と呼吸苦で入院となった.血液培養でStaphylococcus capitisが検出されメチシリン耐性となっていて,抗菌薬治療で十分な感染制御が得られないことから,左第4肋間後側方開胸・逆行性脳還流併用中等度低体温循環停止下に,感染EGおよびTAR人工血管末梢端の一部の摘出とリファンピシン浸漬人工血管による下行大動脈置換術を行った.術後6週間の抗菌薬治療を行い,血液培養が陰性となって経過良好のため,第46病日に退院した.

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