日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告 [末梢血管]
松葉杖の長期不適切使用による外傷性右上腕動脈瘤の1例
東 健太柚木 継二佐伯 宗弘成宮 悠仁森田 翔平鳥家 鉄平井上 知也立石 篤史田村 健太郎久持 邦和
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2025 年 54 巻 1 号 p. 42-44

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抄録

症例は66歳女性.詳細な期間は不明だが関節リウマチに対して数年間のステロイド内服があり,多発関節変形のため松葉杖を数年間使用していた.右上肢のしびれを主訴に近医を受診,頸椎症と診断され経過観察となったが7日後の再診時に右上腕の拍動性腫瘤に気付き当院紹介となった.造影CTで右上腕動脈瘤(19×17×16 mm)の診断となり,しびれは瘤による神経圧迫による症状と考えられた.上腕動脈瘤の原因として長期的な松葉杖の不適切使用があげられ,術後は松葉杖を使用せず他の補助器具を使用することを確認した上で.全身麻酔下に上腕動脈瘤切除および中枢・末梢の直接吻合を行った.上肢の動脈瘤は稀であり外傷および医原性の仮性動脈瘤が多く,壁在血栓による塞栓症,神経圧迫,破裂などの合併症を起こしうるため積極的な手術が推奨される.また松葉杖が原因となった症例では再発リスクを考慮した血行再建が必要となる.本症例では歩行補助器具をロフストランドクラッチへ切り替えることで直接吻合による再建を行うことができた.

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