日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告 [大血管]
上行大動脈置換術後のdistal anastomotic leakに対する自作分枝型ステントグラフト内挿術での追加治療の1例
上平 聡花田 智樹金築 一摩山内 正信
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2025 年 54 巻 1 号 p. 37-41

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抄録

症例は79歳男性,偽腔開存型の急性A型大動脈解離を発症し,緊急で上行大動脈(hemiarch)置換術を施行.術後CTでdistal anastomotic leakと下行大動脈以下の複数re-entryからの血流が偽腔に入り血栓化不良であった.術後2カ月目にはCT上遠位弓部レベルで退院時46 mmから67 mmまで大動脈径の急速拡大を認め追加治療の適応とした.治療は全身麻酔下に左右腋窩―左総頸動脈を8 mm径 のリング付きT字型e-PTFE製人工血管 でバイパス術を先行作製.あらかじめ12 mm径の孔を開窓したステントグラフト(Relay Plus®)を右大腿動脈アプローチで腕頭動脈起始部に開窓孔を合致させ人工血管内に展開留置.さらに右総頸動脈から逆行性に分枝ステントグラフトを腕頭動脈から開窓孔を通して展開し完成させた.つづいてステントグラフト末梢端から腹部大動脈にかけてZenith® dissection stentを拡張展開.左腸骨動脈のre-entryも腸骨動脈用ステントグラフトを展開し閉鎖した.術後6カ月目のCTでは左腎動脈周囲の大動脈にわずかに解離腔を残すのみで解離腔は血栓化退縮した.本法は作製も容易で追加治療としてきわめて低侵襲であり,また人工血管にlandingさせるため逆行性解離のリスクもなく,有用な治療法と思われた.

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