日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告[成人心臓]
Debranching TEVAR術後の急性冠症候群に対してOPCABを施行した腹膜透析の1例
田村 重樹山田 靖之江連 雅彦長谷川 豊星野 丈二岡田 修一井戸田 佳史森下 寛之関 雅浩早田 隆司
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キーワード: OPCAB, 腹膜透析, Debranching TEVAR
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2025 年 54 巻 2 号 p. 49-52

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抄録

症例は82歳男性.虚血性心疾患(IHD)とDebranching TEVAR(右腋窩動脈-左腋窩動脈-左総頸動脈)の既往があり,突然の胸痛で当院に搬送となった.急性冠症候群:左主幹部(LMT)を含む2枝病変(右冠動脈(RCA)#2 75%,#3 90%,LMT#5 50%,左前下行枝(LAD)#7 75%)の診断となった.責任病変であるRCA(#2~3)に経皮的バルーン血管形成術(POBA)を施行し,残存病変については待機的に心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)を予定していた.しかし心原性ショックとなり大動脈内バルーンパンピング(IABP)を挿入し緊急で胸骨下部部分切開(左側への逆L字)によるOPCAB(SVG-LAD, SVG-#4PD)を施行した.術後のCAGでグラフトの開存を確認し,合併症を認めることなく良好な経過を辿った.腹膜透析(PD)患者では術後に横隔膜交通症を合併することや,将来的に透析用内シャントの作製を考慮する必要がある.自験例では将来,内シャント使用中にデブランチによる血流の影響が内胸動脈(ITA)に及ぶ可能性があることから,大伏在静脈グラフトでの血行再建を施行した.また,右腋窩動脈-左腋窩動脈バイパスグラフトが開存していることや胸骨の安定性の観点から開胸方法に胸骨下部部分切開を選択した.グラフト選択のみならず開胸方法を工夫することは,早期離床と周術期合併症予防の観点からも重要であると考えられた.

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