2025 年 54 巻 5 号 p. 207-211
心室中隔欠損症(VSD)経過観察中断後に右室流出路狭窄が進行したと考えられる右室二腔症(DCRV)の成人例を経験したので報告する.症例は30歳代女性.生直後にVSDと診断され,乳児期と幼少期に感染性心内膜炎による入院歴あり.VSDに対しては定期経過観察されていたが,就職を契機に受診が中断していた.定期経過観察中断後10年以上経過し,労作時息切れと胸痛を主訴にかかりつけ医を受診し,VSDの評価目的に当院紹介となった.心エコーでVSDとDCRVを認め,VSDは5×4 mmと微小であったが,DCRV狭窄部の最大流速が4.87 m/sであり,外科的治療適応と判断した.手術は経右房アプローチで右室内狭窄解除術を施行.術後右室内狭窄は解除され,現在外来で経過観察中である.DCRV成人例は稀であり,DCRVという疾患概念への認識不足や症状の非特異性により,成人期DCRVは診断困難である.よって,本疾患概念を念頭において診療にあたることが重要と思われる.また,狭小な心室中隔欠損であっても継続した経過観察が必要であると考える.