症例は幼少期にファロー四徴症で心内修復術を受けている52歳の完全内臓逆位の男性.50歳時に左中大脳動脈の脳塞栓症で血栓回収術を受け,後遺症なく回復.Holter心電図,心エコー検査,造影CT検査などで塞栓源が同定できないまま抗凝固療法が開始された.心エコー検査では中等度の大動脈弁閉鎖不全症(AR)を認めたが,左室拡大なく自覚症状もなかった.その後,52歳時に心不全で入院し,ARの増悪と,大動脈基部拡張症,三尖弁閉鎖不全症,単冠動脈,逆位の左上大静脈遺残(PLSVC)が確認された.PLSVCは左房還流型であり,脳塞栓症を生じた奇異性塞栓症の原因病変と診断した.本症例に対し,ベントール手術,三尖弁形成術,PLSVC結紮術を行ったので,文献的考察を加えて報告する.