日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告[成人心臓]
左回旋枝起始異常を伴う僧帽弁逸脱症に対して僧帽弁形成術を行った1例
大友 勇樹大友 有理恵北村 律山本 信行
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2026 年 55 巻 2 号 p. 65-68

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抄録

左回旋枝の起始異常は,冠動脈起始異常の中でも良性とされており無症状のままで経過する場合がほとんどであるが,大動脈弁および僧帽弁の手術を行う際,その解剖学的な位置関係から支障をきたすことが報告されている.今回われわれは,左回旋枝起始異常を伴った僧帽弁逸脱症に対して僧帽弁形成術を施行した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.59歳女性,息切れと体重増加を主訴に当院循環器内科を受診した.心エコー検査でA1の腱索断裂による僧帽弁逸脱症と診断され,僧帽弁形成術を施行する方針となった.術前の冠動脈評価にて左回旋枝が右バルサルバ洞から起始し,僧帽弁前尖側の弁輪に沿って走行している異常が認められたことから,弁輪形成については左回旋枝への干渉を避けるためにリングではなくバンドを選択した.A1に一対の人工腱索を再建し,術後の心エコーでは弁逆流の消失を認めた.冠動脈CTAにてバンドと左回旋枝との距離は離れていることが確認できるが,もし弁輪形成にリングを選択していた場合には,左回旋枝に大きく干渉していた可能性がある.今後僧帽弁手術において同様の起始異常が認められた際には,本報告が左回旋枝の虚血イベントを回避し,安全に弁形成を行う上で参考になり得ると考える.

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