2026 年 55 巻 2 号 p. 73-77
症例は31歳,男性.後腹膜腫瘍が下大静脈に浸潤し,さらに総腸骨静脈血栓を認めたため,IVCフィルターが先行して留置された.後腹膜腫瘍は悪性奇形腫の腹部リンパ節転移であり,術前化学療法が施行された.化学療法によって病勢は制御され,腫瘍の完全切除により治癒が期待できると判断され,手術目的に当科紹介となった.両側腎静脈合流部の下大静脈へ到達するため,Cattell-Braasch法で下大静脈にアプローチした.腫瘍は下大静脈と腹部大動脈に浸潤していた.完全切除のためには,両大血管を含めたen bloc切除が必要であった.下大静脈と腹部大動脈を遮断し,腫瘍切除を行った.下大静脈はIVCフィルター留置部を遮断し,リング付きePTFEグラフトで置換した.腹部大動脈はDacronグラフトで置換した.術後CTで人工血管の開存を確認し,遮断したIVCフィルター関連の合併症は認めなかった.現在,術後2年が経過し,再発や血管イベントを認めず外来通院中である.IVCフィルター留置後の下大静脈置換術は稀であるため,文献的考察を交えて報告する.