抄録
症例は47歳男性.健康診断で胸部異常陰影を指摘された,胸骨右縁第III肋間で拡張期逆流性雑音と収縮期駆出性雑音を聴取した.胸部X線では右房影と異なる右第2弓の突出を認めた.心臓カテーテル検査では,左室拡張末期圧18mmHgと上昇を認めるほかに異常はなかった.大動脈造影では大動脈弁輪直上の右Valsalva洞に一致して8×10cmの瘤を認め,大動脈弁閉鎖不全はII度であった.大動脈弁閉鎖不全を合併した巨大な心外型右Valsalva洞動脈瘤と診断した.体外循環下に瘤を切開すると,大動脈弁輪より上方に径約3cmの瘤口を有する右Valsalva洞動脈瘤で,右冠状動脈は閉塞していた.大動脈弁輪を挙上しつつ瘤口部をパッチ閉鎖した.右冠状動脈への血行再建は行わなかった.術後残存した軽度の大動脈弁閉鎖不全と右冠状動脈閉塞による虚血症状の発生に留意しつつ経過観察している.