日本心臓血管外科学会雑誌
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体外循環回路の貯血槽を利用した自己血返血システム
血液凝固学的検討
高山 鉄郎松本 博志井手 博文斉藤 寛文岡部 英男松永 仁古瀬 彰
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1989 年 19 巻 2 号 p. 93-100

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抄録

体外循環回路の貯血槽を用いて回路内残血およびその後のドレナージチューブより回収した血液の自己血返血システムを導入,これら回収血の各血液凝固因子活性を経時的に測定,本システムの有効性と問題点をおもに血液凝固学的側面より検討した.通常開心術症例24例を対象とした.本システムの使用により使用輸血量は平均輸血量250mlまでに減少し,無輸血症例も11例と増加した.体外循環終了後の各凝固因子活性は患者側動脈血では順調に回復を示した.一方,貯血槽内血液では体外循環終了後1時間では残存ヘパリンの影響が著明であり,3時間の回収血液ではフィブリノーゲン量のみがきわめて低値を示した以外はとくに内因系因子が著しい高値を示した.本研究により自己血返血システムは輸血量の節減効果のみではなく,体外循環終了後の止血という点でも有効であることが認められた.一方,フィブリングルーの使用によるシステム内凝固の発生や,回収血の高度溶血の問題が今後さらに改良される必要があると思われた.

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