1992 年 21 巻 1 号 p. 82-86
上行大動脈に高度の石灰化病変がある54歳の女性症例に対して, 上行大動脈にまったく操作を加えずに冠動脈バイパス術を行った. 大腿動脈より送血カニューレを挿入して体外循環を行い, cardioplegia 液を使用せず大動脈非遮断低体温心室細動下に, 両側内胸動脈と右胃大網動脈の3本の動脈グラフトを使用して3枝バイパス術を施行した. 術後は脳合併症など起こすことなく順調に経過した. 上行大動脈の高度石灰化症例に対してはこの aortic no touch technique が安全かつ確実な手術方法と考えられた.