1992 年 21 巻 2 号 p. 191-194
52歳の主婦で, 先天性の大動脈弁狭窄に伴う上行大動脈の post-stenotic dilatation に, 急性A型大動脈解離を併発した症例である. 解離は, 左冠動脈にも及んでいたため, 大動脈弁置換術, 人工血管による上行大動脈置換術, ならびに, 大伏在静脈を用いての左冠動脈へのバイパス術を施行した. 人工心肺離脱後も人工血管吻合部を中心に出血がみられ, 長時間の止血操作にもかかかわらず止血が困難のため吻合部を中心にガーゼによる圧迫止血を試み, 閉胸とした. 術後, 血小板を中心とする成分輸血により, 28時間後に圧迫ガーゼを除去することができた. 術後急性腎不全なども克服し, 現在, 外来通院加療中である.