抄録
僧帽弁疾患の70例を対象に術前CTと手術所見とを比較した. 左房血栓の診断率はCTで79.2% (19/24), エコーで62.5% (15/24) で, CTでの偽陰性は5例とも3g以下の血栓であった. 左房壁の石灰化はCT上15例にあり, うち10例に術中に左房血栓を認め, うち9例に内膜の粗鬆化を認めた. 左房壁石灰化のうち, 10例に術後早期にCTを行い, 4例に術後左房血栓を認めた. 僧帽弁の石灰化のCTによる診断率は95.2% (40/42) で, エコーでの81.0% (34/42) より優れていた. CT上での僧帽弁の石灰化群の40例では弁の変形や肥厚が高度で, 全例にMVRを必要としたが, 非石灰化群30例中では9例にOMCが行われた. 大動脈弁の石灰化は大動脈弁狭窄のある11例中9例にみられ, 全例で術前CTで診断できた. 石灰化群の大動脈弁置換率は65.0% (13/20) と非石灰化群の14% (7/50) より有意に高かった. 以上より, CTは左房血栓や僧帽弁, 大動脈弁, 左房壁の石灰化が的確に診断でき, 弁や壁の障害度を推察するのに有用な診断法と思われた.