抄録
本論文は京城の中心地である鍾路通り地区を対象に、 1923_から_40年時点の『京城商工名録』を用いて商工業者の立地状況とその変遷の実態を分析した。その結果、これまで観念的な認識に止まっていた鍾路通り地区における用途分布が実証的に把握できた。これには、インフレで京城商工名録の収録基準が相対的に低下したためか、小規模な業者まで収録できたことが大きく寄与した。また、商工業活動の営業継続状況を分析したところ、時代の流れに応じて品目や商売形態を修正したり、あるいは不動産事情を反映した営業所を移転したりしていた実態が明らかになった。これらは、鍾閣一帯の繁栄した都市空間の形成と表裏の関係にあった。