日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
僧帽弁置換術後左室破裂の検討
久冨 光一磯村 正林田 信彦平野 顕夫福永 周司佐藤 了西見 優青柳 成明小須賀 健一大石 喜六
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 21 巻 5 号 p. 419-423

詳細
抄録

僧帽弁置換術後の左室破裂は, とくに遅発例に関して救命率も低く, 発生要因の解明および防止法の確立が急務である. 今回われわれは1965年9月より1991年8月までに, 当科において僧帽弁置換術を施行した1046例中, 術中および術後に左室破裂をきたした8例を対象に, その発生要因の検討を行った. 年齢は43歳から67歳 (平均58歳), 男性1例, 女性7例で, 破裂部位 (Treasure, Miller らの分類) は type I 5例, type II 2例, type III 1例, 左室破裂発症時期は, 体外循環離脱時3例, 閉胸時1例,術後11時間, 14時間, 18時間, 25時間のおのおの1例であった. 8例中3例は心拍動下に左室外側より修復, 5例は体外循環下に心停止を行い, 左室内腔より破裂部を修復した. しかし体外循環離脱直後に発生し, 心停止下に修復を行った2例 (おのおの低心拍出量症候群, 多臓器不全にて術後2日目, 44日目に死亡した) 以外は, 修復後もまったく止血不能であった. われわれはとくに最近の遅発例で, 血圧の上昇後に突然発生したこと, 組識学的にも心筋細胞の脱落, 変性を広範囲に認め, 心筋の脆弱性が認められたことから, 術後急性期の動脈圧の急激な上昇を避ける管理は, 発生防止の有効な方法となるものと考えている.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
次の記事
feedback
Top