日本心臓血管外科学会雑誌
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小児心臓外科領域における吸収糸の使用経験
吸収糸の有用性と問題点
平松 健司今井 康晴澤渡 和男竹内 敬昌杉山 喜崇磯松 幸尚
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1992 年 21 巻 5 号 p. 464-468

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抄録

教室では縫合部の成長を期待する目的で, 1986年以降小児心臓血管手術の際吸収糸を使用してきた. 吸収糸の使用対象疾患は 1. 高圧系手術, 2. 亜全周性僧帽弁輪縫縮術, 3. 低圧系手術の3群で, 各群の遠隔成績について検討を加えた. 1群では大血管の吻合にPDS®を用いた Jatene 術6例を対象とした. 術前と術後6~56 (平均18.6) か月に施行した大動脈造影側面像より求めた新大動脈吻合部の成長曲線は正常であった. 2群では乳児僧帽弁逆流に対し Vicryl®・Dexon®を使用して亜全周性弁輪縫縮術を施行した7例(MR 4例, ECD 3例)を対象とした. 術後全例僧帽弁逆流は改善し, このうち術後4年半まで追跡しえた2例で僧帽弁輪径の成長は正常であった. 3群では共通肺静脈-左房吻合にPDS®を用いたTAPVD (Darling 分類I型およびIII型) 16例を対象とした. このうち2例で術後1.5か月目にPVOによる緊急解除術を経験し, 組織の過増殖のための吻合部狭窄が術中確認された. 以上より小児高圧系心血管手術における吸収糸の使用は推奨しうるが, 新生児低圧系の小口径心血管吻合では組織の過増殖により吻合部狭窄を招く危険性があり吸収糸は使用すべきでないと考えられた.

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